2017年11月7日火曜日

ガラクトーイ<集落>展 制作風景

のぞきに立つ巨大な“ガラクトーイ”

初日には未だしばらく間がある11月5日の昼前の事です。森貴義さん夫妻が、車に荷物満載で当店に到着。荷物を降ろし終えると、奥さんのNさんだけが、積みきれなかったガラクトーイを取りに再度自宅へ。二階では、早速作者によるガラクトーイの<集落>制作が始まりました。集落の骨組みになる板や、巨大なガラクトーイとも見える構造材を次々にネジ止めし、二階正面から窓際に掛けて、少しづつ<集落>が姿を表わし始めます。二時間ほどで組み上がる予定が、結局完成を見たのは夕方で、そこから300個余りある様々な大きさのガラクトーイを<集落>に配置する作業が始まりました。夫婦二人掛かりで、作業終了は結局午後9時を過ぎていました。何もやらない私は楽でしたが、お二人ともお疲れさまでした。

二階に出現した“ガラクトーイ”の集落
一階階段下の仮面や“ガラクトーイ”
吹き抜け壁の“ガラクトーイ”
段ボール製の仮面ほか
仮面三種 • 河井寛次郎晩年の
仕事の一つ、“木の仮面”の
仕事が私には重なって見えます
<集落>住民紹介
それぞれに名前あり



2017年11月6日月曜日

森貴義 ガラクトーイ < 集落 > 展 のお知らせ

         
今月11日(土)から26日(日)までの予定で、2009年以来8年振り3回目の「森貴義 ガラクトーイ<集落>展」と、作者によって名付けられた展覧会をあまねや工藝店2階を会場に開催いたします。今春5月、アクロス福岡の交流ギャラリーで行われた福岡書芸院主催の書展「可否TIME」の会場に、出陳された多数のガラクトーイを展示する為、その折用意された「塔」を拡張再構成し、当店二階の会場にガラクトーイの「集落」を出現させる試みです。私自身もアクロス福岡の会場で、久し振りに作者の手になる多数のガラクトーイを実見し、その会場構成も含めた面白さに脱帽しました。ひと月程前、忙しい作者が当店を訪ねて来てくれました。何事かと思いましたら、会場構成の計画の為に細かく会場を採寸して行きました。どうやら今回は御本人の気合いの入り方が違う様です。今展はDM用に用意された写真も会場構成も作者自身の手になる、その意味でも、当店初の展覧会です。皆さんどうぞご覧下さい。

今展は期間中の月曜日13日と20日は休みます。また、始まりの時間が12時からになっていますのでお気をつけ下さい。土曜日の作者在廊は確かではありません。確実な作者在廊日は日曜日です。


2017年11月1日水曜日

忘れられないもの 32 John Graham の版画

“ Diptych Ⅱ ” 縦75cm×横100cm

アイルランド人の版画家 John Graham の作品を初めて目にしたのは、1997年6月に本屋の店頭で手にした美術雑誌「日経アート」の記事中で、浦和の「柳沢画廊」に於けるJ•グラハムの日本初個展の紹介文と共に、作品の写真数点が同誌に掲載されていたのです。

その条(くだり)を、後に当店に於ける三回目の個展(2001年)の案内状に、私は次の様に書いています。「 ’97年の6月、美術雑誌のページ上に J・グラハム作品の写真を見出した時、親しみと同時にその作品の持つ表現の新鮮さに強く惹かれました。それはまるで一目見て人を好きになる様に私を大胆にし、連絡先であった浦和の柳沢画廊に、その日の中に電話をし、福岡での個展開催の申し入れをしたのでした。しかし、柳沢さんを通じて申し入れをしたジョンとの一回目の交渉は上手く行きませんでした。よく考えれば当たり前ですが、どこの誰ともわからない人物からの申し入れが、そう簡単に受け入れられる筈がありません。(Johnの側からの「初回作品半量買い取り」の条件提示で)諦めかけた処に、福岡書芸院主幹の前崎鼎之さんから、「全面的に支援する」との有難い申し出があり、’98年の春に書芸院一階の「ギャラリー聚」で第一回展開催の運びとなったのでした。<後略>」

日本では、未だ一般には馴染みの薄い版画の技法、カーボランダム
プリントと呼ばれる黒一色、或は黒と灰二色の太い(ある巾を持った表情のある)線を組み合わせた彼の造型は、何処か「書」の表現にも通ずる強さと新鮮な魅力を持っていて、J•グラハムの版画に一目で私は魅せられました。

さて、J•グラハムは1962年ダブリン生まれ。父親が工場労働者であった為に貧しく、27歳まで大学進学が出来なかったと聞きました。母校の美術大学では、版画の刷り師としての勉強をし、後に版画家に転身。カーボランダムを始めとして、エッチングやアクアチントなど多様な技法を用いて、魅力的な作品を数多く作り出しています。


中でも、忘れ難いのは「ギャラリー聚」における第一回展に出品された“Four Figures”と名付けられた黒一色のカーボランダムプリント
四枚一組の大きな作品(各 横100cm × 縦150cm 写真はDublinのGreen on Red Gallery での展示の様子)で、展示のために4×8(120cm × 240cm)の合板パネル四枚を用意して、それぞれに作品
一枚ずつを留め付け、二枚一組を屏風の様に角度を付けて立ち上げた時のその偉容、圧巻でした。国籍も時代も違いますが、私の目には
棟方志功の板画「釈迦十大弟子」を彷彿させる、何か得体の知れない
凄まじいエネルギーのほとばしりを感じさせるすごい表現に見えました。「生まれたての表現」に出会う事が出来た喜びの記憶と共に、John Grahamは私にとって忘れられない版画家です。